【一口馬主ブログ】一口馬主の雑記帳

零細一口馬主のブログです。ロードサラブレッドオーナーズで2018年に一口馬主デビュー。2019年にユニオンにも入会しました。

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見事落選(笑)Gallopエッセー大賞投稿作品~後編~

 Gallopエッセー大賞投稿作品、後編です

最後の更新。後編です。週明けからは平常運転で一口馬主トピックを投稿していきます。もし今回の一連の更新で後編まで読んでしまった奇特な方がおられましたら…

悪い夢でも見たと思ってください。

 

後編

5

 肝心のレースのことは実はあまり覚えていない。ただ、いくつか記憶に残っていることもある。最初から最後までアーモンドアイを追いかけていたこと、アーモンドアイが跳ぶようにゴール版を駆け抜けたこと、鳥肌が立ったこと、昌義が「レコードだ!」と叫んだこと、心臓をグッと捕まれたように胸が熱くなったこと。そんなところだ。とにかく夢心地だった。

 打ち上げのため、生ビール一杯百八十円という激安の居酒屋に移動した後、興奮気味にまくし立ててくる昌義の言葉に生返事をしながら俺はさっきの夢心地な感覚が何かに似ているとずっと考えていた。

 そして、突然ふっと何かが降りてきたように結論に至った。

 そうだ、この感覚は恋に似ている。

 ドキリとして、他のものに目が向かなくなって、覚悟をして、勇気を出して、夢心地になる。

 樹里と出会った時もそうだった。初めて会った時から好きだった。目を奪われた。自分で決めて、告白した。終わってしまったけど、二人の時間は夢心地そのものだった。

そうか、俺は恋をしたのか。アーモンドアイに。今日、世界に羽ばたいた女帝に恋をしたのだ。

 納得したら腹の底から急に笑いがこみ上げてきた。別れたばかりだというのに、なんて移り気な男だろう。しかも今度は叶わぬ恋に違いない。人と馬なのだから。

 でも、それでもいいと思った。映画のように出会ってから最後まで添い遂げるだけが恋じゃない。俺と樹里の終わった恋だってまぎれもなく恋だったのだから。

 「なに笑ってんだよ?」怪訝な顔で昌義が言った。

 「別に」俺は笑みをかみ殺して返事をした。「…今日は行ってよかったよ。楽しかった」

 「そうだろ、そうだろ」昌義が我が意を得たとばかりに食いついてきた。「競馬最高だろ?また行こうぜ」

 「ああ」

 「来週はチャンピオンズカップってレースがあるぞ。JRAで年二回しかないダートのGⅠ。ルヴァンスレーヴってヤバい馬が出るんだ」

 昌義を見る。頬が上気していた。昌義の青春もいわば叶わぬ恋なのだろう。しかも、こいつの恋は根が深そうだ。

「だからなに笑ってんだよ?」

「なんでもねえよ」

 俺はもう笑いを隠すことなく言った。生ビールのジョッキを口に運ぶ。

 新しい恋に乾杯。柄にもなく、そんな気障なことを思った。