【一口馬主ブログ】一口馬主の雑記帳

零細一口馬主のブログです。ロードサラブレッドオーナーズで2018年に一口馬主デビュー。2019年にユニオンにも入会しました。

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見事落選(笑)Gallopエッセー大賞投稿作品~前編~

Gallopエッセー大賞

ご存じの方も多いと思うのですが、競馬専門誌GallopではGallopエッセー大賞という賞を公募しています。先週と今週のGallopに大賞と佳作が掲載されていましたね。

ブログ主も毎年「へぇー」と眺めていたんですが、実は今年初めて投稿をしてみました。このブログを始めたのが今年の4月くらい。それが実に楽しい。書くのが楽しい。それならエッセイも書いてみたら楽しいかも、という感じで書き綴り、結果を待ったところ…

見事、一次落選(笑)

箸にも棒にもかからないとはこのことです(笑)

改めて自分で書いたものを読み返してみると、これはエッセイというよりはフィクションなので「応募条件守れよ」の次元の話だったわけですが、一生お蔵入りするのも何だか勿体ないのでブログに3編に分けて公開してみたいと思います。なぜ3編かというと、シンガポール競馬に遠征している間はタイムリーな更新ができないからです。

というわけで、前編です。ちなみに舞台はアーモンドアイが勝ったジャパンカップです。

 

前編

1

 天気雨かと思って髪を拭ったら唾だった。

 右手に感じた粘りのある感触でそのことに気付いた時、俺は嫌悪感で顔をしかめた。急いでポケットを左手で探るが、何も拭くものは持ってきていなかった。

 「おい、ティッシュ持ってないか?」

 横で巨大なターフビジョンに向かって目を凝らしている昌義に聞いた。大き目の黒縁メガネが相変わらず似合っていない。本人は松田龍平のつもりだが、どう見ても歯ブラシを舐めているときのイジリー岡田である。

 「ねえよ」

 簡潔で素っ気ない答えが返ってくる。つい苛立った。まずこっちを向けよ、と言いたくなった。

 「拭くものならなんでもいい。なんかないのかよ」

 「ちょっと後にしてくれ。二着が際どい。馬連取ったかも」

 知ったことかと思った。改めて手の平を見る。唾の量を見る限り、意図的に吐かれたものというより、叫んだ口から飛んだ大き目の飛沫のようだった。それでも、十一月末の寒空の下、乾燥した肌に他人の唾がしみこんでいく気がした。

 「じゃあ、その新聞を寄こせ」

 昌義が握っているスポーツ新聞をもぎ取った。すぐさま手の平を擦り付けるようにして拭く。

 「あ、何すんだ!お前」昌義が顔を赤くして抗議する。「まだ七レースだぞ。ジャパンカップまでのレースどうすんだ」

 「うるさい」

 取り合わなかった。とりあえず水分の痕跡が無くなるまでゴシゴシと吹いた。それでも気持ち悪さはどうしても抜けなかった。頭上を見上げる。本当に人類が作ったのかと思う程、立派なスタンドが広がっていた。フジビュースタントというらしい。睨みつけたが、誰の唾の飛沫が降ってきたのかはわからなかった。

2

 昌義とは中学、高校、そして大学と続く腐れ縁の仲だ。俺がサッカー部、バスケ部、テニスサークルと女子を意識した移り気な青春を過ごす中、昌義は競馬に青春を捧げてきた。なんでもいつぞやの秋にブエナビスタという馬に出会ったのが昌義の青春の始まりだったらしい。暇さえあれば昌義は競馬場に足を運び、俺にはわからない何かに焦がれている。

 一方、俺は今日が初めての競馬観戦だった。なぜ今日来たのかは自分自身も理由がよくわからない。もちろん、昌義からは熱い勧誘を山ほど受けた。

 「絶対に損はさせない。俺が保証する」

 まるでマルチ商法のような誘い文句で昌義は熱弁した。

 「東京競馬場は綺麗だし、空が広い。解放感があって最高だ。俺のホームグランドなんだ」

 まさか唾の飛沫が降ってくるところをホームにしているとは思わなかった。

 「しかも、今週はジャパンカップだ」

 知っているのは日本ダービー有馬記念だけだったから落胆した。

 「妙味はないが、アーモンドアイには逆らえない」

 馬ではなく、新しい流行のカップケーキか何かの話かと思った。

 「新しい歴史が生まれる瞬間に立ち会おう」

 何を大袈裟な。

 別にそんな数々のイケてない誘い文句にかどわかされたわけじゃない。他にも要因は色々あった。月曜日に彼女と別れたとか、バイトを入れようにもたまたまシフトが埋まっていたとか、天気予報が晴れだったとか、そもそも日曜日は別れた彼女の誕生日だったから家に一人でいたくなかったからとか、色々だ。

 要するに、魔が差したのだ。そうとしか言いようがない。