【一口馬主ブログ】一口馬主の雑記帳

零細一口馬主のブログです。ロードサラブレッドオーナーズで2018年に一口馬主デビュー。2019年にユニオンにも入会しました。

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海外の競馬場に行きたくなる?! 競馬エッセイ『競馬漂流記』

旅に出たい(と思う気持ちはある)

ゴールデンウイークの半ばとなり、旅先から自宅に戻ってまいりました。といっても、旅先とは妻の実家のわけですが。電車で片道2時間ほどなので、小旅行と言っていいのか非常に微妙な距離の実家であります。

New元号に突入し、センチメンタルに浸るわけではありませんが、10年前には自分が家族連れで抱っこ紐に幼子を抱えて旅をしているとは思ってもおりませんでした。10年前の自分にとって「旅」と言えば、基本的には「行き先を決めない」のが必要条件でしたから。 

思えば、私は特に胸を張って自慢できることがある人間ではありませんが、色々と旅はしてきました。

バイトで貯めた金を利用して大学の夏休みをすべて使って日本中を野宿しながら回ったこともありました。バックパッカーで東南アジアをめぐり、ブロークンイングリッシュを身に着けたことも。そういえば、馬に関連しては友人と日高の牧場を回り、たまたま訪問したのがマイネルの牧場で、撫でさせて頂いた馬がマイネルホウオウというGⅠ馬だったこともありました。

今出来るのかと言われれば、やれなくはありませんが、昔の自分と同じ行動はとらない気がします。あの時より(多少)お金はあるから、野宿するならビジネスホテルに泊まるでしょうし、時間はないから行き先は決めざるをえないけど、あえて絶対行きたいという場所も無いし…

 

そんな自分の心を見透かすような本に出合いましたので、今日はそんな旅をめぐる本の紹介です。結構読み応えがあるので、ゴールデンウイークの半ばにいいかも。

『競馬漂流記~では、また、世界のどこかの観客席で~』 著:高橋源一郎

概要

著者の高橋源一郎さんは小説家でもあり、文芸評論家でもあり、エッセイニストでもあります。一番、お名前を知られているのは小説家としてでしょうか。『さようなら、ギャングたち』は高校時代に手を取ったことがありましたが、ちょっとその当時の私(今もかな?)には高度だったので読み切れなかった苦い思い出が(笑

ただ、競馬が好きな方にとっては、高橋源一郎さんはもう一つの顔があります。それは、競馬評論家であること!ハイセイコーに出合ったのが競馬を始める契機だったという高橋源一郎さんはサンケイスポーツで「こんなにはずれちゃダメかしら」を30年以上連載するほどの競馬愛好家です。平成の間ずっと続いているとか、すごいですよね。(私は東スポ派なのでコラムがあることくらいしか知りませんでした。)

そんな著者がご自身の30代後半から40代前半にかけて、海外の競馬場を巡り、出合った人や馬との旅の記録、いや本書のタイトルに沿って言えば、漂流の記録が本書です。

本書の推薦ポイント

推したいポイントとしては、なんと言っても著者の文章の語り口そのものだと私は思います。本書は数十にも及ぶエッセイ(一部連作もあり)で構成されていますが、その一つ一つがまるで独立したショートストーリーのように読むことが出来ます。

著者が現地の競馬場に旅した時に出合った人との会話から始まったり、はたまた昔語りのような思い出話から導入したり、海外の競馬場やそこで疾走した馬の話で構成されていたり、その他にはJRAの試みを先取り(?)したようなドリームレースという章があったりもします。

本書が刊行されたのが1996年ですので出てくる馬は一世代前の馬達なのですが、古臭さを感じずに読めるのが血統のスポーツである競馬の素晴らしいところ。もちろん、著者の筆力は言及するまでもありません。

気になったセンテンス

特にこれはいいなあ、と思ったセンテンスを2か所ピックアップして引用させていただきたいと思いますね。

『馬を好きになるのと馬券は別だという人間がいる。その人の言うことはたぶん正しいだろう。正しい人間はいつまでも正しいことをすればいい。だが、わたしは自分が正しいことを証明するために競馬場に通っているのではない』(章:昔、わたしの大好きな芦毛がいた、ページ44(文庫版))

かっこいいと思います。本当に。純粋に。

一口馬主を満喫しながらも、その収支をしっかりつけたりしている自分が恥ずかしくなります。

 

『「空を飛ぶ鳥に、飛ぶ理由を訊ねてはならない」という。なぜなら、彼らはただ生き、飛んでいるだけだからだ。

(中略)

だが、サラブレッドだけは「生きる理由」を与えられる。それは競馬場にたどり着き、他の馬より速く走るということだ。彼らの生涯は一切がそのために費やされる。それをサラブレッドに強いたのは人間だ。』(章:100分の39、ページ185(文庫版))

この章は自身の所有馬に関して思いを語っている章です。自分が出資している馬達を仮想の「高橋厩舎」の所有馬と言ったりするのは、一口馬主なら誰もが一度はするかと(笑)

そんな思いがありながらも、サラブレッドの宿命に思いを至らせるのは小説家ならでは。

引退したサラブレッドのセカンドキャリアについては様々な意見があるとは思いますが、サラブレッドの幸せを願うのは競馬を愛する人皆の願いのはず。私はそんなことまで想像させられました。

読む時はコーヒー片手に休み休み?

以上、ご紹介でした。

一つ注意点としては、さすがの文章力がいかんなく発揮されたおかげ(?)で中々一気読みは難しいかも。私は読み切るのに3日くらいかかりました。登場してくる競馬場や馬を調べながら読んだりしていたせいもありますが…

そういう意味でも、ゴールデンウイークの半ばにおススメの一冊です。(笑)